労働問題で困ったときには

※「日本の法制度」においては、その内容が無効に近いものであっても、一度なされた(準)法律
行為(解雇などの意思表示、懲戒処分、業務命令等)は何らかの対抗行為(取消し・無効請求)
のない間、効力があります。一方「日本の社会」ではこの「日本の法制度」が浸透していないこ
と、並びに風土的に忌避されることによって、労使の職制において対等化が実現しないので
す。「言った者勝ち」の先手社会が形成されてしまうのは、日本における法制度と社会との相
性の悪さが主たる要因ですが、兎も角苦しい立場に追い込まれた場合、何らかの対抗行為
が要求されています。
特 徴
ポイント
都道府県労働局
紛争調整委員会
あっせん
行政型・調整型
(合意に達していない状態=紛
争状態の解決を目的とする)
個別労働関係紛争法
主として、法律に規定されてい
ない内容、人事や内部体制に
関する紛争をカバーする。
労働基準監督署
労働基準法・労災法・労働安全
衛生法に関する指導・監督
指導・調査
是正勧告
申告・告訴・告発受理
司法処理(労働警察)
簡易裁判所
司法型・対立型
(自己の正当性を主張し、相手
の論理不備を追及)
140万以下の訴訟
小額訴訟(90万以下)
民事調停
支払督促
地方裁判所 司法型・対立型
(自己の正当性を主張し、相手
の論理不備を追及)
訴額換算できない事件
簡裁設定の訴額超事件
労働審判
(地裁)
第1回期日-争点・証拠の整理と書
証の取り調べ
第2回期日-証人取り調べ
第3回期日-補充的な証拠調べ、
調停の試み・解決案(審判)の宣告
適法な異議申し立て→通常訴訟
労働審判官と専門的知識経験をも
つ二名の労働審判員で労働審判
委員会を構成
※訴訟前置制に近く、弁護士を
代理人とすることを想定している
労働委員会 団体労働紛争つまり労組と会
社間の労働争議の調整を行
う。
不当労働行為の審査
(あっせん)
個別の労働紛争にも対応
合議制(公労使)
期日回数の制限なし
弁護士 権利義務、民事訴訟法 訴訟代理
社会保険労務士 内部管理体制、職場関連法規 あっせん代理、労務管理改善
都道府県労働局
紛争調整委員会
機会均等調停会議
調停
行政型・調整型
均等法
男女間の差別(女性労働者のみ)
調停は相手方の参加意思を問
わず開始される

慰謝料、治療費、謝罪文、雇用
保障については取扱われない
議員等社会的地位者
マスコミ、世論
口利き 圧力度 0〜∞ (関係による)

方法論としては、・団体交渉・訴訟・あっせんの三種に大別できる。

あっせんについて、個別労働紛争の実態を検討した最新の対応策であるだけに、間口と奥
行きは相当広いものとなっている。ここでの「紛争」とは、労使の合意が得られていない状態
をいい、関係が良好である紛争もありうる。基本は労使協調型であるため。したがって、裁
判のような証拠物件重視、攻撃と防御によった正当性判断というかたちは採用されてない。
話し合いできる状態でなければ《あっせん打切り》、紛争事項について合意できれば《和解
書》にて解決します。

※「簡便迅速」というキャッチフレーズを誤解しないこと。労働審判についても同じことがいえ
ますが、行政型・司法型を問わず、事実関係、証拠物、権利関係を見渡した上で、裁判する
手間等を省くための裁判外紛争解決制度なのです。
なお、『労働審判制度 基本趣旨と法令解説』(菅野他・弘文堂)を参考に、裁判外紛争解決制度へ
の期待を示せば、
・紛争当事者となった労働者の脅かされた生活、紛争当事者となつた使用者にのしかかる
重いコストの問題が、専門家により、短期間で、事案に即した解決が図られ、労使双方に多
大なメリットがもたらされる。
・制度が定着していけば、企業内の紛争解決システムが変容していく。法令・判例等を基準
として紛争解決が図られる制度の定着は、企業内で生じた個別労使紛争を労使が自主的
に法令の解釈や判例理論にしたがって解決していこうとする実務慣行が定着していく。そう
なれば、企業内労使自治の新たな成熟したステージとなる。
・労働局のあっせんでは原則1回期日、労働審判では3回期日である。駆け引きの要素を排
除し、客観的かつ合理的な解決に向けて労使双方が初めから全力を投入しなければなら
ない制度となっている。制度が広く受け入れられていくならば、次回期日までに書面で提出
していくといった書面主義と言われる民事訴訟実務慣行に良く影響するだろう。






戻る
戻る